「それならお前がそばにいりゃ済んだ話じゃないのか!?」
「あぁ、俺ダメ。木岐さん恐怖症だから」
……は?
今俺はとてつもなくアホ面をしていることだろう。
なんてったって、そんなの聞いた事がないからだ。
「……言っちまえば大半の人が木岐さん怖がってるけどな」
「違う違う、ただ怖いだけじゃなくて、見るだけで動けなくなるんだ」
……動けない?
「例えば、子供の頃に犬に噛まれたり追いかけられたりした子は、犬を見るだけで恐怖する」
「あー……そうだな」
「高い所から落ちれば高所恐怖症、人から傷つけられれば対人恐怖症」
「そうだな」
「だから、子供の頃にバット持って追いかけ回された上に一発殴られた事がある俺は木岐さん恐怖症だ!!」
なるほど──!!
じゃねーよ!
「でもさ、妹は別じゃん。あの子は優しい。でもやっぱり妹と関わるってことは、木岐さんに近付くのと同じなんだよ。あの2人は仲が良いから」
確かに、あの時の木岐さんはすっげー威圧的だった。
木岐さんと初対面した時の事を思い出す。