俺だって、あの空白の時間が無くなるわけじゃない。

どうしたって過去は取り戻せないし、悔んでもどうにもできない。


でも、その分未来がある。

始まりも終わりも、これから自分が作っていく。

それを、悔やまないように、楽しめばいい。

精いっぱい、楽しめばいいんだ。


「郁未、最後に乗りたいもの、言えよ」


今日が終わりと始まりの日。

ったく、洸稀が言ってたように、こいつを受け止めてやるよ。


「観覧車。観覧車に乗りたい」


遊園地の最後、俺は郁未と二人で観覧車に乗った。

空が焼けて、オレンジ色に染まる。

ただただ寄り添って、二人で外を見ていた。


「龍河くん、誕生日おめでと」

「……あぁ」


郁未が俺の手を繋いできたから、絡めてきたから、俺はそれを握り返した。

俺の手よりも小さくて、細かった。


観覧車を出ると、また銀色の車がタイミング良く現れた。


「ありがと、河崎さん」


また、河崎さんだった。

河崎さんに送ってもらって、長い一日は終わっていった。