「さぁな。俺を見たとたん逃げ出したんだ」


「引き止めなかったのか?」


「あぁ。

見たことのない男も一緒で、追いかけたらこっちが捕まる所だ」


「男……?」


「恋人じゃないのか? そんなムードだったけど」


 幸也は右手を口元にあて、考え込む。


飯田紗耶香の彼氏……?


自分が姉のように慕っていたイトコの殺害現場に、恋人と一緒に行くだろうか?


少し花を添える程度でも、別に昨日の夜である必要はない。


現場はまだ生生しさが残っているし、自分の首を締めてどうするつもりだ?