震える手で何度も拭ったけど、次から次へと溢れ出してくる。

なんだ、これ……。


「冴木……くん?」

青木は濡れているコンクリートの上に膝を付いて俺と同じ目の高さになった。


「……いや、これ違うから。べつにただの雨だし……」

俺は必死に目を擦り続けた。

するとポタッポタッと頭上で音がする。それは雨がビニール傘に当たる音。青木はそっと自分のさしていた傘を俺に傾けて言った。


「もう雨降ってないよ」

ニコリと笑いながら。


雨はもう俺に降ってないのに止まらない瞳の滴。俺はずぶ濡れになりながら俺を見つめる青木の手をとっさに引いた。

気がつくと傘はパシャッと地面に落ちて、俺は青木を抱きしめていた。


それは強く、強く。

だれかの前で泣いたのも、だれかの前で弱さを見せたのも、だれかを強く抱きしめたのも初めてだった。