弘行くんは新しい家の中を、十分に堪能したのか満足そうだ。 「やっぱり新しいっていいね」 「そうだね」 今だ嬉しそうに笑みを浮かべながら、積み重なっている段ボールから荷物を取り出し整理をしだす。 「そうだ、先に挨拶しに行かなきゃ」 思い出したように飛び上がりバタバタと玄関の方に走って行く。 ―娘を置いて行くなよ。 置いて行かれたことに、苦笑いをしながら、走って行く弘行くんの背中を見つめる。