たかがバイトをするのしないのって話が、こんなふうに大袈裟な事になってしまったけれど、僕としては良かったと思っている。

自分が優柔不断で、何事も他人任せだって事は判っていた。

でも、その事をきちんと言われるのとそうでないのとでは、意識の問題として違って来る。

リュウノスケをちょっと見直した僕は、母へのメールにバイトの返事とその事を書いた。

夜遅くまで起きていたのに、頭も気分もすっきりした気分で翌朝を迎えた。

アニータが僕の顔を見るなり、

「サンジュ、オトーさんと、大ジョブ?」

今朝は、おはようの挨拶よりも先に心配する言葉が出て来た。

「アニータ達は初めて見るからびっくりしたろ。でも心配いらないよ。僕達、いつもああやって喧嘩してんだ」

「いつも?」

「うん。言ってみれば親子のコミュニケーションさ」

「コミュニケーション……」

あれが?という顔をアニータはした。

「おはよ、ブエノス・ディアス、ケ・タル?」

ニキータが寝ぼけ眼を擦りながら起きて来た。

「マス・オ・メノス、悪くはないよ」

姉妹揃って僕のスペイン語にニヤリとした。




*ブエノス・ディアス、ケ・タル?=おはよう、調子はどう?

*マス・オ・メノス=まあまあだよ