いつものリュウノスケとは一味違う、父親らしさを感じた。

リュウノスケとこういう会話をしたのは、初めてかも知れない。

普段なら、絶対に照れ臭くて話せないような事も、この夜は自然と話す事が出来た。

リュウノスケも、いつになく真剣に語ってくれたし、聞いていて何だかカッコ良く思えた。

「俺さあ、アニータが教師になりたいっていう話を聞いて、羨ましいのと、悔しいのが入り混じった気持ちになったんだ。俺の方がイッコ年が上なのに、彼女の足下にも及ばないなって……」

「そりゃしょうがあんめえ。あの子が見て来た世界と、お前が見て来た世界が違い過ぎるからよ。けど、お前もなかなかだぜ」

「どこが?」

「アニータの話を聞いて、ちゃんと何かを感じ取ったんだからよ。なりたいもんとか、夢なんてえもんは、そうそう見つけられるもんじゃねえぞ」

「じゃあ、どうやって見つければいいのさ」

「見つかるかどうかは気にすんな。結果を求めず、とにかく自分から動くこった」

「そうやって小説家になる夢を見つけたの?」

「単純に好きから始まっただけさ」

「好きかあ……」

僕は自分の一番好きなものは何だろうと考えた。

考えたけど、やっぱりまだ見つからない。