さよなら異邦人

いきなりアニータの身体が僕の背中にぶつかって来た。

そのまま彼女の腕が僕の腰に回された。

凄い力だ。

「なぜ?なぜ、けんかする!サンジュ、出て行く、よくない!よくないよぉ……」

背中越しにアニータの涙声がガンガン響いて来た。

リュウノスケをやり込む為に、家出をするふりをしたのが、アニータには本気と映ったのだろう。

何処にも行かせないといった感じで、僕は身動きが取れなくなってしまった。

姉のニキータも、激しく泣きじゃくるアニータの涙が伝染したのか、わんわん泣き出した。

こうなると僕もリュウノスケも弱い。

「大丈夫だよ、何処にも行かないよ。ノ・セ・プレオクペ」

僕は覚えたばかりのスペイン語で、アニータを宥めた。

ニキータも彼女の頭を撫でながら、キスの雨を降らせている。

もう一人の当事者であるリュウノスケは、完璧に酔いから醒めて、茫然自失といったところだ。

親子揃って女の子の涙には、からっきし弱いのだ。




*ノ・セ・プレオクペ=大丈夫だよ、心配ないよ