さよなら異邦人

「私、センセー、なりたい。学校のセンセーになって、ペルーで子供、教える」

「学校の先生かぁ……。アニータなら大丈夫だよ。頭もいいしさ」

「グラシアス、ありがとう」

僕より一つ年下の彼女が、ちゃんと夢を持っている事に、ちょっとだけ嫉妬心に似た感情が湧いた。

「ねえ、アニータはいつ頃から教師になりたいって思い始めたの?」

彼女は暫く考えてから、五歳という意味なのか右手を広げた。

「五つの時?」

「はい。ちっちゃい時に、なりたい、思いました」

そんなに幼い頃からちゃんとした夢を持てたなんて……

僕は益々興味を持ち、彼女に、なりたいと思った理由を聞いてみた。

「ペルー、学校少ない。お金持ち、行く学校はある。でも、その人達、少ない。多い人、みんなお金ない。私、お金ない人の学校、働く。たくさんの子供に、たくさん、勉強おしえる」

彼女が言っている意味は、多分貧富の差を言っているのだろう。

彼女達を知るようになってから、僕はペルーについていろいろと調べてみたが、結構複雑なようだ。

白人系と、インカ帝国の末裔でもあるインディオとでは、特に貧富の差が激しくて、それは彼女達のような日系移民の子孫にも当て嵌まる事らしい。