さよなら異邦人

家に戻り、父にこの事を話そうと思っていたが、こういう時に限って帰りが遅い。

相談と言っても、僕の気持ちは既に固まっていたのだが。

それに、僕が何かをしようという事に対して、父は反対しない事も判っている。

お前の好きにしろ、と言うに決まっているからだ。

父の帰りだけでなく、ニキータの姿も見えなかったから、その事をアニータに尋ねると、彼女もアルバイトを始めたという。

「ニキータ、居酒屋、アルバイトする、帰り遅くなる」

アニータと二人きりの食事をするというのは、ちょっとドキドキものだ。

彼女との会話も最近ではスムーズになり、僕が日本語を教え彼女から英語とスペイン語を教えて貰いながらいろんな事を話した。

アニータの通う日本語学校には、ペルー人は彼女だけで、他は中国人が多く、学校では友達が出来ないと愚痴をこぼしていた。

「ほんとは、日本人の高校に、行きたい。でも、私の日本語、まだ上手じゃないから、無理。サンジュと一緒の高校、行ってみたい」

「アニータなら大丈夫だよ。来てまだ一ヶ月も経っていないのに、すごく日本語が上達しているじゃん。すぐに日本の高校へ行けるよ」

「そうなるといい。私、夢、ある」

「夢?」

アニータから将来の夢を聞いたのは、偶然にもアルバイトの話を母から持ち掛けられた日の事であった。