だって、読者のニーズがどうとか言って、書いているのはラブコメやファンタジーばかりなんだもの。

芥川賞を取るって言っている男がだよ。

確か芥川賞って、純文学だよね。

ケータイ小説は僕もたまに検索して読む事があるし、面白いとも思う。

ラブコメやファンタジーだって好きなジャンルだけど、それは無いでしょって感じがするんだ。

絶対、父のイメージじゃないもの。

そろそろ勘のいい人なら、僕の名前、判るよね。

父親が芥川龍之介の名前と同じ。

その名前から影響されて、小説家を目指す。

生まれて来た息子に付けた名前。

そうなんだ。

さんじゅうご……

まんまさ。

直木賞の冠になっている有名な作家から頂いた名前。

直木三十五という作家が、偉い人だっていうのは判るけれども、どうせ有名作家から名前を拝借するんだったら、春樹だとか龍だとか、圭吾もあるし、雄彦だってあるのに。

ん?雄彦は漫画家だった……。

どっちにしても、さんじゅうごって数字で呼ばれる息子の苦悩を少しは理解しているのだろうか。

これもね、離婚した母とは大喧嘩になったらしいよ。生まれて来た子供の名前の事で。

僕が生まれて直ぐに離婚したって言うから、ひょっとしたらこんな事も離婚原因の一つかなって思ってしまう。

よく父に言われるのが、

「何でお前はもう一年早く生まれて来なかったんだ。俺が三十五の歳に生まれていれば、文句無しだったのに」

何が文句無しだか、訳が判らない。