さよなら異邦人

母との待ち合わせ場所は、いつも通り渋谷にした。

母の勤め先が恵比寿なので、丁度通っている高校との中間地点が渋谷になるからだ。

学校帰りに母と会うのは、ちょっと久し振りだ。

東横線の改札口で里佳子と待っていると、真っ白なパンツスーツ姿の母が、ちょっと意外そうな表情を見せながらやって来た。

「サンちゃんから会いたいってメールが来たから、どういう事なのかなって思ったけれど、こういう事かぁ」

いきなり母の勘違い光線が、フラッシュの如く放たれた。

「違う違う、あのね、」

「はじめまして、加瀬君とお付き合いさせて頂いている影山里佳子です」

僕の言葉尻を捉えて、里佳子は有無も言わさずそう自己紹介した。

お陰で、母の勘違い光線は益々強くなり、余りの眩しさに僕は立ち眩みがした。

「こんなところで立ち話も何だから、何処かでお茶でもしましょうか。それとも、軽く何か食事でもする?」

「腹は空いてない……」

殆ど不貞腐れ状態の僕は、二人にそっぽを向くようにして言った。

「里佳子さんは?」

「お母様にお任せします」

里佳子の二重人格め!

二人はまるで旧知の間柄のような親密さで、僕の二メートル先をすたすたと歩いて行く……。