さよなら異邦人

襖を閉めた父はいきなり、

「どこまでいった?AかBか?まさかCまでいっちゃったのか?」

「あのさ、勘違いも程々にしなよ。手も握ってないっつうの」

「ほんとか?」

「ほんと」

「何だよ、押し倒さなかったのか?」

「はあ!?」

「はあじゃねえよ。男子たるもの、据え膳食わぬは何とやらって、昔から言うだろうが」

「いきなり、俺のニキータに手を出すかぁ!って言ってた傍から、普通そういう事言わないだろう」

「あれは勝手に出た言葉だ。息子を持つ父親の心境としてはだな、無事男子の本懐が遂げられたかの方が気掛かりなんだ。本当に何も無かったのか?」

「何べんも言うけど、やましい事は一切ありません。ちょっとあぶなかったけど」

「何だ、もう少し遅く帰って来れば良かったのか」

「それ、マジで言ってんの?」

「半分だけ」

「半分でもありえねえっつうの」

「とにかく、お前も早く一人前の男になる努力をせねばな。今度はチャンスを逃すなよ」

「リュウノスケ……」

「何だ?」

「一度医者行ったら」

「心配すんな。今んとこ具合の悪い所は無い」

駄目だこりゃ……。