クローゼットの中を開け、僕は暫く考えてから自分の衣類をそっくり父の寝室へ移す事にした。

机の中にある物も、必要な物だけを移して、僕のプチ引越は終了した。

着替え終えると、ニキータが冷蔵庫から冷えた麦茶を出してくれた。

「サンキュー」

にっこりと微笑むニキータは、確かに妹のアニータとそっくりではあるが、やっぱりお姉さんだけあって、大人の女性という雰囲気が漂っている。

こりゃあ拙いぞ……

完璧にリュウノスケのストライクゾーンだ。

長年、父の女性遍歴を見て来ているから、こういう勘は100%当たる。

居間のテレビを点けると、ニキータも自分のグラスを持って来て横に座った。

横!?

わざわざ真横に腰を下ろしたニキータをちらっと窺がうと、ほんのり顔を上気させていた。

彼女が手にしているグラスを横目で見ると、何と無く麦茶とは違う色をしていた。

お酒!?

まあ、二十歳になっているんだから、別に飲酒は悪くないんだけれど。

出された麦茶に手を伸ばし、ぐびっと一口飲んだ。

「……!?」