「ここのチョコクレープ、結構美味しいって評判なんだよ」

「うん、確かに旨い、けど……」

「けど、何?」

店構えと値段でとんでもないものを期待していた僕は、一個250円で売られている立ち売りのクレープと然程変わらない事に、少々がっかりしていた。

「加瀬ェ、人に奢って貰いながら旨くないはないでしょ」

「不味い訳じゃない。倍以上の値段なら、もっと美味しいのかなって、そう思っただけさ」

「スイーツ男子のウンチクはその辺にして、さあ、話して」

「ん?」

「ん?じゃないでしょ。朝の電話」

「ああ、あの話か……」

話すよと言った手前、アニータの事を話さなきゃならない。

何と無く僕は気が進まなかった。

嫌々という感じで、僕は里佳子に事のあらましを話した。

「その子、可愛いの?」

「可愛い、かなあ……まあ、そうだと思うよ」

本当は、びっくりするくらい可愛い女の子だと言いそうになった。

けれど、そんなふうに言ったら、彼女に何と言って冷やかされるか知れたもんじゃない。

「ねえ、アタシより可愛い?」

「はあ!?」

予期せぬ言葉が里佳子の口から出て来た。