さよなら異邦人

「何だよ、そういう事かよ。いいよなあ」

「何が?」

「影山とさ、仲いい男子って、お前だけじゃん。みんな羨ましがってんだぜ」

「羨ましがられる事とは思えないよ。まるで小間使いにされてる」

「それでも羨ましいっつうの。影山にだったら、俺、いくらでも尻に敷かれる」

「ドMかお前?」

「影山にだったら、MにもSにもなるさ」

「よく判んねえ」

「加瀬ェ!まあだ?」

廊下の方から催促する里佳子の声が響いた。

「急がねえと後が怖いから、もう行くよ」

廊下に出ると、里佳子がむくれた顔をしていた。

「もう、とろいんだから」

「お前、ドSか?」

「ばぁか、あんたとSかMなんていう変態談義している暇はないの。時間が余り無いから急ぐよ」

「暇だから買い物すんじゃねえの?」

「買い物だけじゃないの。年中暇している加瀬と違って、アタシはいろいろスケジュールがあんの」

元々、せっかちな性格をしている彼女だ。

影山里佳子と一緒の時間を過ごすなら、その辺を承知して置かないと付き合えない。