さよなら異邦人

「交番で電話を掛け直して貰ったら大丈夫じゃない」

「そっかあ、それで行こうって、なんでリカコがここに居るんだ?」

忍者みたいに足音もさせずに僕の前に現われた彼女は、

「これでもクラスの副委員長だから、同級生の急用がどんな事なのか知っとく必要があるの」

納得していいものだかどうかよく判らない理由だったが、そんな事はどうでもよくて、とにかく僕はアニータに交番からもう一度電話を掛けて来いと伝えた。

「ねえ、アニータって誰?」

「アニータはアニータさ」

「それ、答えになってないけど」

「リカコに教えなきゃなんねえ事か?」

「副委員長という立場で聞いてんの」

「面倒臭えなぁ」

「ふぅ~ん……」

「ふぅ~んって、何だよその目」

里佳子は僕の全身を嘗め回すような視線を寄越し、

「アタシに隠し事すんだ」

と、呟いた。

その表情は、マジで怖かった。