さよなら異邦人

廊下に出て電話に出ると、案の定アニータからだった。

「どうした?」

(ごめんなさい、わたし、道まよった。最初、オトーさんに掛けた。出ない、サンジュの番号、オトーさんに聞いてた。困ってる、サンジュにヘルプ頼む、そうする、大ジョブ、言われた)

必死になって日本語を喋ろうとする彼女の声は、今にも泣き出しそうだった。

「判った、今どの辺に居るんだ?」

話を聞くと、郵便ポストを探しに出歩いたらしい。

ペルーへエアメールを出そうとでも思ったのだろうか。

彼女が掛けている公衆電話の場所を聞き出すのに、随分と手間が掛かった。

それで、僕は一旦彼女に駅へ向えと言った。

「駅への道を尋ねる位なら簡単だろ?」

(うん…多分)

「駅に着いたら、交番があるから、今度はそこでうちの住所を言って道を教えて貰うんだ」

(……サンジュ、わたし、住所、知らない)

「今、手元に書くもんあるか?」

(かく、もん?)

「ペンとか、ペーパー」

アニータは泣きそうな声でノーと言った。