さよなら異邦人

なんとか口の中のタマゴロールを飲み込み、

「ごめん、ごめん。で、何の話?」

「いいよ。もう教室に着いちゃったから」

「そっか」

教室の中は、いつもと変わらぬ騒々しさだった。

影山里佳子の姿を見るや否や、彼女の取り巻きとも言うべき女子軍団がさっと集まる。

いきなり始まる女子達のマシンガントーク。

内容はジャニーズ系を中心とした芸能ネタか、持ち物検査をすり抜けて生き残ったファッション雑誌の話題。

女子が三人以上集まって話し出すと、その騒音レベルはラッシュ時のプラットホーム並みになる。

隣の席だから、当然僕は至近距離に居る訳だが、女子軍団はまるで気にしていない。

たまに、男子が聞いたら赤面しそうな際どい話をしている時もある。

そうすると、必ず女子の誰かが、

「サンゴォ、なぁに人の話聞いてんのよ」

と言って来る。

お前等が勝手に人の横でくっちゃべってるんだろうが!

とは言い返さない。

いや、言い返せない。

他の女子が僕を呼ぶ『サンゴ』とは、名前の三十五だと呼び辛いから、縮めてそう言うのだが、里佳子だけは、いつどんな時も苗字で呼ぶ。