さよなら異邦人

「アタシも朝パンしちゃおうかな」

「リカコも朝飯抜きだったのか?」

「加瀬と違って、アタシは早起きだからちゃんと朝食は食べて来ているわよ。加瀬が美味しそうに食べているから、ちょっと食べてみたくなったの」

そう言うや否や、彼女は僕の手にあったタマゴロールをさっと掻っ攫い、パクッとかじった。

「俺のタマゴロール……」

「資金提供はアタシなんだから、文句言わないの」

そう言いながら、彼女はもう一口頬張った。

「うん、美味いね。はい、残りは返す」

「ったくぅ……」

返して貰ったタマゴロールには、彼女の可愛らしい歯形が付いていた。

教室へ行くまでの間に、僕は黙々とタマゴロールを食べた。

横で彼女は喋り続けているが、僕の思考は完全にタマゴロール一点。

彼女の言葉なんて殆ど耳に入って来なかった。

「……だからね、て、加瀬ェあんた人の話聞いてんの?」

「ホァ?」

最後の一口を目一杯頬張っていたから、まともに返事が出来なかった。