さよなら異邦人

「サンジュ、がっこう?」

アニータが聞いて来た。

「ああ、急がないと遅刻しちゃう。今日の門番は、生活指導のゴリ山だからやばいんだ」

早口で捲くし立てた僕の言葉が理解出来ないのか、アニータはぽかんとしまま突っ立っている。

「ごめん、俺今から着替えるから」

僕はそう言って制服と鞄を持って父の寝室の襖を閉めた。

制服に着替えながら、僕は自己嫌悪に陥っていた。

アニータに対する自分の態度が、ものすごく冷たい感じだったからだ。

それが自分でも判った。

きっと、彼女は僕の事を嫌な奴と感じたろうな……

学校から帰ったら、ちょっとは優しく接してやらなきゃ……

何をどう優しく接するのか、自分でもよく判っていないくせに、僕はそんな事を考えていた。

着替えが終わり、キッチンの食器棚にあった食パンの残りをそのまま咥えなら、出掛ける用意をした。

玄関の鏡を覗くと、右後頭部の髪の毛が寝癖で悲惨な格好になっていた。

時間を確認しようと思い、ポケットからケータイ電話を取り出そうとした。

いつもならズボンの左ポケットに入れている筈なのに、入っていない。

「サンジュ、これ忘れ物」

後ろからアニータの手が伸びて来て、ケータイ電話を渡された。

「サンキュー……」

言った傍から僕は玄関の外へ出ていた。