エメラルドグリーン……。

本当に宝石みたいな色をその海はしていた。

海岸沿いの岩山に点在する、白壁の家。

そんな風景も被写体として悪くはなかったが、僕が撮りたいものは、そういうものではなかった。

命を感じれるもの……

人であり、生き物であり、植物であり。

地中海をバックパッキングして歩く若者は、思っていた以上に多かった。

多分、時期のせいもあるだろう。

一日10キロから20キロを歩き、ゆっくりと目的地を目指した。

ラベンダーの生まれ故郷を。

僕が富良野で見たラベンダーの種類は、スペインからギリシャに掛けての地中海沿岸が原産地だと知った。

標高1.800メートル以上の高地に生える、自然のラベンダー。

日本からやって来て一週間。

僕はついに彼女と再会した。

路傍に咲くもの、急斜面にひっそりと身を寄せ合って咲いているもの、岩場の陰からそっと顔を覗かせているもの……

里佳子が、いっぱいいた。