長い長いと思っていた夏休みも、過ぎてみればあっという間に終わった。

その間、里佳子の消息は耳に入って来なかった。

それは、ある意味いい知らせのようなもので、生きる事に彼女は闘っている真っ最中なのだろう。



生活指導のゴリ山に、二学期開始早々、僕は運悪く遅刻を見つかった。

たった2分。

生徒手帳に遅刻のバッテンを書き込まれ、くどくどと説教を喰らった。

既にみんな教室に入っていて、人気の無くなった廊下を教室へと急いだ。

もう担任が来ているのか、普段ならまだ騒々しさが感じられる筈の教室が、扉越しにもやたらと静かだった。

そっと開ける。

り、リカコ!?

一瞬……ほんの一瞬だったが、彼女の姿を見た。

幻と気付くのに、時間は掛からなかった。

彼女の姿を見れる訳が無い。

僕が幻を見た正体は、里佳子の机の上に飾られた紫色の花のせいだった。

あの日感じた香りが、その花から漂っていた。

里佳子の香りが……