さよなら異邦人

計三回。僕はビートルと部屋を往復した。

全部を運び終えると、居間の六畳で彼女達が英語以外の言葉で話していた。

様子が気になってどうしてもそっちに目が行ってしまう。

「サンジュ、お前もやっと色気づいたか」

彼女達をちら見していたのを父が目敏く見つけた。

「別に。それよか、リュウノスケまで僕の呼び方がサンジュになっているよ」

「アニータにお前の名前を教えた時、彼女どうしてもサンジュウゴって言えなくてな。でも、サンジュの方がカッコよくねえか?」

「別にどうでもいいよ。変な名前には変わりないから」

「ばかやろ、親が真剣に考えて付けた名前を変だなんて言う奴がいるか。ほら、そこの肉取ってくれ。それと、そっちの塊は早いとこ冷凍庫にしまってくれよ」

「人使いが荒いなあ。でも、こんなにいっぱい、入んないよ」

「しゃあねえな。もう一個別に冷蔵庫を買うか」

「買う?金あんの?」

「金の心配してくれんなら、お前も学校やめて働くか?」

「学校行くなって言う親、リュウノスケ位のもんだね」

「学校なんてもんは、少なくとも本人に学ぶ意思がなけりゃ、苦痛以外の何物でもねえだろう。真実を学ぶんなら、社会の方が幾らでも学べるってもんだぜ」

「僕は苦痛に感じた事なんて無いけど。勉強も嫌いじゃないし」

「なら、大学でも何でも行くこったぁ」

「言う事がころころ変わるんだから」

「変幻自在と言え」

「僕には気分屋としか思えないけど」

父との会話はいつもこんな調子だ。

冗談としか聞こえない話でも、いつの間にかお説教じみた話に変わる。

こういう会話って、僕は割りと好きだけど……。