さよなら異邦人

 勿論、この時は彼女が重い病気に掛かっているなんて知る由も無かったから、たまたま不良を気取って飲んでいたビールのせいだとばかり思っていた。


 血の気が引き、青白くなった顔を見た私は、彼女の実家に電話を掛け、迎えに来て貰った。


 モーテルの毛布で包まれた彼女を見た両親の目は、私を無言の刃で幾度も刺し貫いた。


 翌日、彼女は学校を休み、私は二度と坂巻千鶴子の顔を見る事は無かった。


 自分のせい……


 そう思い込んだ。彼女の病気を知らされた時、私は誰にも言えない罪悪感に苛まれた。


 夏休みに入って数日したある日。


 その彼女から一通の手紙が届いた。


 几帳面な文字で、便箋一杯に書かれたその手紙には、鎌倉での事が書かれてあった。


 その手紙は、四十年近く経った今も、私の机の奥底にしまってある。