さよなら異邦人

 女の子と二人で何処かへ出掛けた事など無かった私は、坂巻千鶴子にその事を悟られないようにと、精一杯背伸びをして接していた。


 まるでデートなんて何度もし飽きている、そんな態度を取っていた。


 彼女が行きたがっていた海は、子供の頃に大好きだったおじいちゃんに一度連れて行って貰った鎌倉の海だった。


 江ノ電の車窓から見える海を、彼女は飽きずにずっと見ていた。


 せっかくのデートだというのに、二人の間には会話らしい会話はなく、唯一私が話し掛けた言葉も、


「お前、俺と一緒で楽しいか?」


 などという、デリカシーの欠片も無い言葉だった。


 午後になって天気が急変し、嵐のような豪雨に見舞われた。


 ずぶ濡れになった身体を震わせながら、ホテルで休もうと言ったのは、私の方だった。


 年齢相応の恋愛感情よりも、異性に対する欲望ばかりが先に立った私は、服を乾かすという尤もらしい口実を言って、無言で頷く彼女を近くのモーテルへと誘ったのだ。


 誘ってみたはいいが、実際には何も出来なかった。


 理由は、彼女の容態が悪くなったからだった。