「お父さん、ひどいよ」


 いきなり娘が私に向ってそう言って来た。


「ん?何が?」


「何がじゃないわよ。娘の名前は無断で使うは、揚句の果てはその名前のヒロインを殺しちゃうなんて、あんまりじゃん。それに、パソ使ってるし」


 娘の里佳子が小説の事を言っているのだと、暫く気付かなかった。


 三連休の初日。この休みの間に、何とか完結させようと、休みにも関わらず私は早起きをしてパソコンを操作していた。


「悲劇のヒロインてのも悪くねえんじゃねえの」


 横合いから息子の龍之介も加わった。


「あんたは関係ないでしょ」


「それよかさ、あれってセカチューっぽくねえ?」


 息子が、何年か前に映画にもなった小説を引っ張り出してきた。


「あんたもそう思った?なんかさあ、ありがちな展開だよね」


「むりやり、お涙頂戴っていう感じに持って行こうとしているのが見え見え」


「あら、そんな事ないんじゃない」


 キッチンから妻の淳子までが参戦して来た。


 私の書いている小説の事で盛り上がってくれるのは嬉しい限りだが、それにしても、もう少し優しい批評をして欲しかった。


 こう見えても、私はそんなに打たれ強い方ではない。