「別に隠してはいないよ」


「どっちでもいいけど。ねえ、どんな方?」


「どんな方って、ただのファンさ」


「あなたにファンかぁ。ファンの方は大切だものね。だから、私へのメールより丁寧に……」


「おいおい、何もそんな深い意味はないよ」


 妻の口振りが、私には不倫現場を見つけたかのような感じに受け、つい口調が言い訳をするようなものになった。


「やだ、あなたったら。そういう言い訳をすると、却って勘繰られるものよ。熱烈なあなたのファンなら、私にしても嬉しいわ」


「そ、そうか」


「ええそうよ。あなたがファンの人へ、ラブレターみたいな返信をしなければの話だけど」


「ラ、ラブレターだなんて……」


「もう、ほんとにあなたって昔から顔に出易いんだから。ねえ、このTURUKOさんという方の他に、あなたのファンってどれ位いらっしゃるの?」


「そんなには居ないよ。何せ、ティーンエージャーばかりのサイトだからな。俺みたいなジジイのところへ読みに来る物好きはそう居ない」


「ファンの人を物好きだなんて言ったら怒られるわよ。いい物を書く人のところには、年齢とか関係なく集まって来るもんじゃないの」


 妻の言う正論に、私は頷くしかなかった。