「そんな事ねえよ。アニータは関係ねえから」

「なら、あたいが、ヒッ、すきか?」

里佳子のやつ、幾ら酔っているとはいえ、いきなり核心を突いて来やがった。

「ああ、俺は里佳子が好きだ」

「ほんろ?」

身を乗り出して僕に顔を近付けた里佳子。目が潤んでいる。

ビールのせいで顔は朱にそまり、バスローブ姿と相まってとんでもなく色っぽい。

「しょうこ」

「え?」

「すきらっていう、しょうこ」

「好きに証拠なんているのかよ」

「きす……」

「はあ!?」

「きすしろぉ」

「酔っ払って頭おかしくなったんじゃねえの」

「だめ……」

「駄目もいいもねえよ」

「違う、そのだめじゃない……」

「どう違うんだよ」

「気持ち、悪い……だめ、吐きそう」

そっちの駄目かよ!なんていうツッコミなんか言ってられなかった。

里佳子は僕の身体を押し退けるようにして、トイレへ駆け込んだ。