さよなら異邦人

「よろしく……」

それしか言葉に出来なかった。

「サンジュさん、これ、借りました」

アニータは僕のTシャツを軽く摘み、にこっと微笑んだ。

悔しいけれど、リュウノスケが言うように僕好みの女の子だ。

「あのさあ、どうでもいいけど、俺の名前はサンジュじゃなくて、サンジュウゴって言うんだ」

「はい。オトーさんにそう、教えて貰い、ました。でも、サンジュ、ゴ…発音難しいです。サンジュ…だめですか?」

「駄目って言う訳じゃないけどさ、なんか韓流スターかK-POPの歌手みたいな名前に聞こえるぜ」

「サンジュさん、喋る、早い。ごめんなさい、よく判らない」

「ごめんごめん。いいよサンジュで、気に入ったよ。オーケー、オーケー」

彼女の片言の日本語につられて、僕の喋り方も妙な片言になっていた。

実際、アニータからサンジュと呼ばれると、何だか自分もガイジンになったかのような気分になり、満更でもなかった。

少なくとも、

さんじゅうご

と呼ばれるよりは断然良い。

僕とアニータとが出逢ったこの時、これが、まさかまさかの展開になって行くとは夢にも思わなかった。