さよなら異邦人

 午後。アントニオの件で、他の外国人達が多少動揺するかと思ったが、彼等は何事も無かったかのように仕事を続けていた。


 一人欠けた分、仕事がそれぞれに振り分けられたものだから、忙しさでそれどころでは無いといった感じがした。


 他人の事よりも、自分の事。みんなぎりぎりのところで生きている。仮に、アントニオの事を可哀そうだとか、残念だとか思ったとしても、結局のところ何もして上げられないのだ。


 それは、私にしても同じだ。やれた事は、今日の日当を丸一日分にして上げただけ。それ以上、何も出来ない。


 明日になれば、又別な人間がやってくる。それはまるで、要らなくなった部品を取り替えるようなもの。


 三日もすれば、アントニオという名前の外国人が居た事さえ話題に上らないかも知れない。


 世の中というものは、そういうふうに出来ているもの。そういうものなのだ。


 私は、アントニオが言っていた、娘のアニータの事を思った。


 日本人の恋人が出来た……


 しかし、彼女達は別れなければならない。そうしないで済むには、結婚するしかないのだが、アニータ自身が望んでいたとしても、果たして相手の男性が同じ気持ちで受け入れてくれるかどうか判らない。


 私の父がそうだった。だから、半年後にメリンダはフィリピンへ帰った。