「佐伯さん、ちょっといいですか?」
昼休みとなり、妻が作ってくれた弁当をさあ広げようかと思っていた矢先、事務長に呼ばれた。
「すいませんね、これからお昼だっていうのに」
「いえ、構いません。何でしょう?」
「アントニオの事なんですが……」
「彼が何か?」
「ええ。実は、彼が以前登録していた派遣会社がですね、不法就労の外国人を意図的に雇用していたとかで労働省からの指導監督を受けたようなんです」
「はあ……」
「それで、うちとしても不法就労者はご法度ですから、出入りの派遣会社にも前々から気を付けるように言って置いたんですよ。そうしたら、アントニオが引っ掛かったようでして」
「彼が不法就労者?」
「はい。今、詳しく調べて貰っているんですが、仕事は真面目だし、文句も言わず頑張ってくれていますから、うちとしてもそういう人材を失いたくないんです」
「はあ……」
「ですが、やはり不法就労者はまずいので、今日付けで辞めて貰おうかと。それで、その事を佐伯さんからですね彼に伝えて頂きたいんです」
「今の派遣会社に伝えればいいんじゃないんですか?」
「そうなんですが、現場は現場で本人に直接伝えてくれという話なんです。うちも、こういうケースは初めてなもので、どう対処していいのか。とにかく、午後は帰って貰うように伝えて下さい。それじゃ」
事務長はそう言い残して事務室へと消えた。



