さて、この二人をどうさせるか……


 私の思い出とリンクさせた物語ではあるが、実際のところはたった一つのエピソードを膨らませているだけだ。


 そのエピソードとは……


 私の人生の中で、唯一恋愛らしい想い出。そして、17歳だった私が、そういう感情になるきっかけをくれた一人の異邦人女性。


 メリンダ……。


 最早、彼女のフルネームは忘れてしまったが、褐色の肌と片言の日本語、そして幾つかのタガログ語は私の心に今も残っている。


 18歳で日本にやって来たメリンダは、死んだ父の愛人だった。


 一歳年上だった彼女との同居生活は、私のそれまでの環境を大きく変えた。いや、変えたのは環境だけではなく、人に対する考え方、ものの見方までも。


 メリンダはフィリピンからやって来たダンサーだった。


 新宿にあったクラブで踊っていた彼女を父が一目ぼれをし、そして家に連れて来た。


 17歳という思春期の狭間で揺れ動いていた私は、尽く彼女に反発した。この四年後に病気で死んだ父には、子供の頃から頭が上がらず、結局私は反抗の矛先をメリンダに向けていただけだったのだ。


 当時は気付かなかったが、私は彼女が好きだったのだろう。そして、その心の矛先が彼女への反発を生み、クラスで一番目立たなかったある同級生への、特別な感情へと移り変わって行ったのかも知れない。