さよなら異邦人

 私は発泡酒の缶を持ちながら、高校二年生になる息子の部屋をノックした。


「龍之介、入るぞ」


 ドア越しに聞こえて来るのは、キーボードをカチャカチャとさせる音だけ。


 私はもう一度入るぞと断ってから、ドアを開けた。


「ちょっとだけいいか?」


「なんの用?」


「それ、終わってからでいいんだが、お父さんにパソコン貸して貰えないかな」


「別にいいけど。でも、この後、姉ちゃんがブログやるとか言ってたよ」


「そうか。じゃあ、里佳子が風呂から出たら聞いてみるよ」


「うん……。野うさぎ、すんの?」


「ああ。パソコンの方がいろいろと便利だしな」


 私がケータイ小説を書いている事は、家族の皆が知っている。知ってはいるが、それだけの事で、私がどんなものを書いているのか知らない。興味も持たない。