さよなら異邦人

「佐伯さん、今日はそろそろ終わりにしましょうか」


 フォークのオペレーターの一言で、今日も仕事は終わった。


 外は既にとっぷりと陽が暮れている。


 汗でぐっしょりとなった作業着と下着を脱ぎ、洗面所で身体を拭いて帰り支度をしていたら、アントニオが傍へやって来た。


「サエキさん、これワタシのドーターね」


 ケータイの画面いっぱいに映し出された写メは、父親とは似ても似つかぬ美人だった。


 夕方の休憩の時に、そういえばアントニオと家族の話をした事を思い出した。自慢の娘だという。


 その美人振りを見れば、世界中に自慢したくなる気持ちも判る。


「きれいな娘さんだね」


「ワタシの、オクサン、そっくり。やさしい、りょうりも、うまい」


 年齢を聞いたら、まだ18だという。末娘だけに可愛さもひとしおなのだろう。その事を伝えると、彼はうんうんと何度も頷いた。


 途中まで一緒のバスだったから、アントニオは終始ご機嫌な口調でアニータと名付けた末娘の話をしていた。