さよなら異邦人

「あなた、時間よ」


 妻の淳子が、眠り足りない私を情け容赦なく叩き起こす。


「……あと、5分、いや3分だけ」


「いい歳をして遅くまでケータイ弄っているからでしょ。ほら、朝ごはん食べて行く時間がなくなるわよ。まったく、子供より始末が悪いんだから」


 毎度の如く、妻のボヤキは私の気持ちを萎えさせる。


 洗面所へ行くと、娘の里佳子が丁度トイレから出て来るところだった。


「おはよう」


 私の挨拶に返事もせず、娘は自分の部屋へ消えた。


 もう直ぐ18になる娘の里佳子から、挨拶をされなくなったのはいつからだったろう。


 仕方無い、娘は女親の方へついて行くものと相場が決まっている。


 男親の見方になってくれる筈の龍之介は、私に似て朝が苦手だ。


 後5分もすれば、妻の怒声が彼の部屋で響く。


「龍之介!起きないと朝ご飯抜きだよ!」


 いつも通りの怒鳴り声が響いた。