雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~


天音が私の手首をつかみ、引き寄せる。


「目、閉じて。――契約しよう」


低めの声が、夜風とともに流れてきて心地良い。

落ち着かせるように背中に回された手のひら。

私はいつの間にか天音の腕の中にいた。


そのまま、彼に身を預ける。


「紗矢花の心が、綺麗になりますように」


背中を撫でられ、私の額に何かが触れる。

少しだけ冷たくて、くすぐったい感触。


しばらくして目を開けると……先ほどまでの怒り、悔しさがすっかり消えていることに気づいた。


「天音……、私」

「どう? 気分は」


間近で目を合わせ、天音は微笑んだ。


「すっごく楽になったよ。嘘みたい」

「それなら良かった。お役に立てたかな」

「えっと、お代は」

「今日はお試しってことで、何もいらない。紗矢花の誕生日だしな」

「本当……? ありがとう」


ベンチから立ち上がった天音は、私を見下ろした。

「また、つらいことがあったら、いつでも言って。紗矢花は笑ってた方がいいと思うから」