響は一旦外に出たあと、すぐにリビングへ戻り、立ちすくむ私へ告げた。
「紗矢花、悪い。ちょっと外に出てくるわ。――用事ができた」
それを聞いた私は、黙って顔をそむける。
「ほんとに、ごめん」
淡々と謝る彼に怒りが込み上げてくる。
「――合鍵を持ってるのは、あの人なんでしょ?」
「……事情があるんだ」
響は目をそらして言い訳をした。
「帰ったら、話すから」
「私のこと彼女だと思ってないなら、はっきり言ってよ」
瞳から、感情ごと涙があふれてきて止まらない。
そんな私に背を向け、響は何も言わず家を出て行った。
残された私は、涙が止まるまで床に座り込んでいた。
彼女の誕生日より大事な用事って何……?
この状況が意味するのは、やっぱり自分は響の“彼女”ではないということ。
私は着替えの入ったバッグを持ち、彼の家を後にした。
合鍵は持っていないから、鍵は開けたままで。



