「それに、朝陽くんも春からこっちで働くことになったらしくて……」
「紗矢花。邪魔だからそろそろ帰れ」
急に兄が椅子から立ち上がり、私の首の後ろを掴んだ。
ゴミをゴミ捨て場に捨てるときのように、出口へ向かって雑に放り出されてしまう。
まだジンと話している途中だったのに。
ドアが閉まる直前、愛梨ちゃんに手を振ると、すごく可憐で儚げに微笑んでくれた。
遼には、あんな子が合うのかもしれない。
地下からリビングに戻っている最中、私は遼のことをずっと考えていた。
遼に彼女を紹介しようと思ったのは、それほど本気ではなかった。
あの子を紹介してあげると言ったらどんな反応をするか、それを見てみたかった。
――ただ、それだけ。
知らず複雑な笑みが浮かぶ……。



