「もうすぐおまえの誕生日か」
兄がカレンダーを見て気づく。
妹の誕生日を覚えていたわけではなく、カレンダーに『さやかの誕生日』とピンクのペンで私が記入済みだからだ。
「お兄ちゃん。私、一眼レフのカメラが欲しいな」
「──あ? ……お前に使う金はない」
兄は無情に言い捨て、自分の部屋に入ってしまった。
「……ケチ」
取り残された私は鞄からスマホを取り出し、遼にメールをしてみる。
明日は日曜日だけど、響は仕事があると言っていた。
たぶん仕事というのは嘘で、他の女と逢うのだと思う。私、疑いすぎだろうか。
しばらくして遼から返信があり、明日の昼間、家に迎えに来てくれることになった。
*
今にも雨が降りそうな黒い雲。
アパートの前にシルバーのセダンが停まっている。
近づくと、運転席に座った遼は私に気がつき僅かに目を細めた。
兄がカレンダーを見て気づく。
妹の誕生日を覚えていたわけではなく、カレンダーに『さやかの誕生日』とピンクのペンで私が記入済みだからだ。
「お兄ちゃん。私、一眼レフのカメラが欲しいな」
「──あ? ……お前に使う金はない」
兄は無情に言い捨て、自分の部屋に入ってしまった。
「……ケチ」
取り残された私は鞄からスマホを取り出し、遼にメールをしてみる。
明日は日曜日だけど、響は仕事があると言っていた。
たぶん仕事というのは嘘で、他の女と逢うのだと思う。私、疑いすぎだろうか。
しばらくして遼から返信があり、明日の昼間、家に迎えに来てくれることになった。
*
今にも雨が降りそうな黒い雲。
アパートの前にシルバーのセダンが停まっている。
近づくと、運転席に座った遼は私に気がつき僅かに目を細めた。



