雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

「もうすぐおまえの誕生日か」


兄がカレンダーを見て気づく。

妹の誕生日を覚えていたわけではなく、カレンダーに『さやかの誕生日』とピンクのペンで私が記入済みだからだ。


「お兄ちゃん。私、一眼レフのカメラが欲しいな」

「──あ? ……お前に使う金はない」


兄は無情に言い捨て、自分の部屋に入ってしまった。


「……ケチ」


取り残された私は鞄からスマホを取り出し、遼にメールをしてみる。

明日は日曜日だけど、響は仕事があると言っていた。

たぶん仕事というのは嘘で、他の女と逢うのだと思う。私、疑いすぎだろうか。


しばらくして遼から返信があり、明日の昼間、家に迎えに来てくれることになった。





今にも雨が降りそうな黒い雲。

アパートの前にシルバーのセダンが停まっている。

近づくと、運転席に座った遼は私に気がつき僅かに目を細めた。