――これは牽制?

遼から悪い虫を遠ざけるためなのか、わざわざ私に彼との仲をアピールしてきたのだから。


「遼はいつも“妹みたいな子がいる”と言ってて。よく紗矢花さんの話を私に聞かせてくれるんですよ」

「そうなんですか? ごめんなさい。私、遼に彼女さんがいるの知らなくて、家に出入りしたりして……」

「あ、全然良いんですよ。カレは紗矢花さんのこと、妹みたいに思ってるみたいだし、私もそういうの気にしないんで」


上面だけでニコニコと笑う私たちは、はたから見たら怖いかもしれない。


「遼……私のこと、妹みたいって言ってるんですね」

「ええ。……でもカレ、本当は私たちみたいなタイプより、もっと純粋で清楚な子が好みらしくて」

「純、粋……」


私とは真逆のタイプだ。

目の前にいる、男慣れしていそうな、派手な外見の彼女さんとも。


「だから私、カレの好みに近づけるように、これからもっと頑張ろうと思うんです。やっぱり、カレにずっと好きでいてもらいたいじゃないですか」

「はあ……、ですよね」

「紗矢花さんも、もっと遼に気に入られたいなら、純粋そうな子を目指してみたらいいと思いますよ?」


その人は微かに唇の端を持ち上げた。

まるで私の気持ちを試しているかのよう。


「私は別に…………じゃあ、失礼します」

「また遊びに来て下さいねー」


その“彼女”は、私が帰るまで見送っていて、そのあと遼の家の玄関へ入って行ったようだった。