「……ま、見る人によっては“可愛くて綺麗”に思えるのかもな」
要するに、遼の好みではあっても、陽介の好みではないということらしい。
「陽介はこれから仕事?」
派手なスーツ姿の陽介に今頃気づいたのか、遼は急に話題を変える。
「まあな。今日はイベントあるから忙しいんだ」
「イベント?」
「バレンタインだよ」
「ああ……なるほどね」
ゆっくりと頷く遼は、いつ見ても綺麗。
艶のあるサラサラした黒髪に、窓からの光が反射している。
透けるような白い肌なのに、決して不健康そうには見えないのは、くちびるの色に濁りがなく鮮やかだから。
「紗矢花は、彼氏とどこかに出かけるの?」
声は甘く穏やか。怒ったところなんて全然想像つかない。
「夜景の見える居酒屋に行く予定だよ」
「夜景か、……いいね」
遼は薄く微笑み、優雅にコーヒーカップを持ち上げ口に運ぶ。