コーヒーを3人分運んできてくれた遼は、キッチン側のソファに座った。


「それに、身長176は間違い。健康診断で測ったら、177だったし」


淡々とした口調で遼は訂正する。


「こまかー……。そんなだから彼女もできないんだぞ」


陽介はコーヒーカップに口をつけながら、横目で遼を見た。


「嘘。遼って彼女いないの?」


驚いた私は、飲もうとしていたコーヒーを危うく落としそうになる。


「一目惚れの女が忘れられないんだってよ」

「そうなんだ、意外。私は身長よりも、遼の好きなタイプの方が気になるなぁ」

「……え?」


私の言葉に遼が動きを止める。

さっき陽介が途中まで言いかけた、その続きを聞きたい。


「あー、それなら。目が大きくて髪は肩ぐらいの長さで、小柄で純粋な子」

「陽介に聞いてないよ」

「だから、遼の一目惚れした相手の特徴を言ったんだって。なあ、遼?」

「……まあ、そうだね」


陽介に同意を求められた遼は、伏せ目がちにうなずいた。


「じゃあ、遼が一目惚れするぐらいだから、よっぽど可愛くて綺麗な子なんだね」


私がそう言うと、遼と目を合わせた陽介は、何とも言えない微妙な顔をした。