*
吹き抜けのリビングにはコーヒーの良い香りが漂っていた。
二つあるソファは、向かい合わせで並んでいる。私と陽介は窓際に近い方のソファに座る。
遼はキッチンでコーヒーを淹れているようだった。
ふと、ガラステーブルに置かれていた、遼宛ての郵便葉書が視界に入り目を疑う。
白い葉書には、佐伯遼雅様、と印字されていた。
「え? ちょっと待って。遼って本当は遼雅っていう名前なの?」
「何を今さら。“佐伯遼”は芸名みたいなもんだろ」
陽介が呆れたように肩をすくめる。
「本名は佐伯遼雅、26歳。身長176センチくらい。職業は自称ピアニスト。趣味は読書」
読み上げるかのように、スラスラと教えてくれた。
「好きなタイプは――」
「……あのさ陽介。人の個人情報、勝手に漏らさないでくれる? しかも『自称』って何」
普段より低い声で、遼が陽介の言葉を遮る。
吹き抜けのリビングにはコーヒーの良い香りが漂っていた。
二つあるソファは、向かい合わせで並んでいる。私と陽介は窓際に近い方のソファに座る。
遼はキッチンでコーヒーを淹れているようだった。
ふと、ガラステーブルに置かれていた、遼宛ての郵便葉書が視界に入り目を疑う。
白い葉書には、佐伯遼雅様、と印字されていた。
「え? ちょっと待って。遼って本当は遼雅っていう名前なの?」
「何を今さら。“佐伯遼”は芸名みたいなもんだろ」
陽介が呆れたように肩をすくめる。
「本名は佐伯遼雅、26歳。身長176センチくらい。職業は自称ピアニスト。趣味は読書」
読み上げるかのように、スラスラと教えてくれた。
「好きなタイプは――」
「……あのさ陽介。人の個人情報、勝手に漏らさないでくれる? しかも『自称』って何」
普段より低い声で、遼が陽介の言葉を遮る。



