雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~




まずは自分の家から一番近い、陽介のアパートに行くことにした。

陽介は兄のバンド仲間で、私の高校時代の同級生でもあった。

アパートの駐車場に車を停め、電話で彼を呼び出す。


「陽介、着いたよー」

『はいはい、今行くわ』


しばらくして階段を下りてきた彼は、これから結婚式でも行くのか?というような派手な格好をしていた。

体のラインがはっきり出るシルバーグレイの細身スーツ。

第3ボタンまで開けたエンジ色のシャツから覗く黒っぽいネックレス。

少し捲くった袖の下には、いかにも高そうな腕時計がはめられていた。


「何それ。ホストみたい」


助手席に乗り込む彼へ感想を告げる。


「あ、惚れた?」

「全然。惚れてないし」


得意気に腕時計を掲げてくる陽介へ、私は冷えた眼差しを送った。