雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~


「ねえ、お兄ちゃんは彼女のところに行かないの?」


二つ目のトリュフを口に入れ、私は何気なく聞いた。


「……この前、別れた」


不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、ぶっきらぼうに兄は告げる。


「え? もう別れたの?」


家に彼女を連れてきたときに、一度だけ見かけたことがある。すごく綺麗な人だったのに、もったいない。


「……なあ。それさ、全部義理?」


兄の呆れた視線の先にあるのは、紙袋に入ったプレゼントの山。一つ一つ、綺麗にラッピングされている。


「全部じゃないよ、本命もちゃんとある」

「本命って……。お前、まだ黒瀬さんと付き合ってんの?」


長く伸びた前髪を掻きむしった兄は、再びソファから起き上がり、正面から私と向き合った。


「付き合ってたら悪い?」

「別に。あの人は、やめておいた方がいい気がするだけだ。紗矢花が傷つかないうちに別れた方が……」

「――どういうこと?」


ソファにあぐらをかき、睨むように床を見つめる兄へ、私は詰め寄った。