雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~



珍しく青空が澄み渡る休日。

この日はバレンタインデーのため、人気のあるケーキショップは混雑していた。

リビングのソファに横になり音楽を聴いている兄に、買ってきたトリュフを渡す。


「お兄ちゃん。はい、チョコレート」

「……あー、そこ置いといて」


感謝の欠片もなく、天井を見上げながら気だるそうに兄は言った。


「いらないなら先に食べちゃうからね」


テーブルに置いた兄へのプレゼントを勝手に開け、フローリングの床に座ってトリュフを一つつまんだ。


「ん。おいしー」


さすがケーキ屋さんのチョコは違う。

コクのある甘さが口の中に広がり、私はしばらく幸せな気分に浸る。

そんな私につられたのか、ソファから起き上がった兄も手を伸ばしトリュフを口に入れた。


「……甘」


兄は顔をしかめ、また寝転がった。