雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~


黒瀬響は私より4つ年上の26歳。

微かに吊り上がった、はっきりした形の目が好きで。抱きついたときにシャツ越しから香る、落ち着く体の匂いに惹かれている。

職場の女の子からは、よく飲み会に誘われるらしく、心配が尽きない。



出会いは、兄の隼斗が参加したライヴの打ち上げについていったことがきっかけだった。

兄のバンドの次に演奏した響たちは、あの日一番評判がよく、私も密かに注目していた。

最近は仕事が忙しく、響のバンドは休止中だけど、その頃、彼はベーシストだった。


賑やかな打ち上げで兄の目を盗み話しかけたら、連絡先を聞かれ、それから二人で逢うようになった。

たぶん、一目惚れだったと思う。


今は……彼以上に好きな人は現れないかも、というくらい好き。

なのに彼は。付き合って3ヶ月経つのに、まだ合鍵をくれない――。