地下鉄の駅を出ると視界が真っ白だった。

大粒の雪が空から降りてきて、道を覆っている。

まだ夕方の4時だというのに薄暗い。


「寒い……」


白い息を吐く紗矢花はスカートの下から素足が覗いていて、見るからに寒そうだ。

一応ブーツを履いているけれど膝が隠れていない。


「遼、さっきの話の続き――、きゃっ」


可愛い悲鳴が聞こえたと思ったら、紗矢花はすぐ後ろで雪の上に座り込んでいた。

足を滑らせて転んでしまったらしい。膝が粉雪にまみれている。



「大丈夫?」


紗矢花は雪を払いつつ、頬を膨らませ恨めしそうに見上げてくる。


「もう、転ぶ前にちゃんと助けてよー」

「無茶言わないでくれる? そこまで反射神経よくないし」


苦笑しながら差し伸べた手に、遠慮なくつかまった彼女は歯を見せて笑った。


「遼の手、温かい」


子どもみたいに無邪気に、冷え切った左右の手のひらで俺の手を包む。


小さくて柔らかい感触に軽く動揺した俺は、そのまま彼女の手を引き、前へ向き直った。


「けど、俺が転んだら紗矢花も道連れだよ」

「遼は転んじゃだめ」


紗矢花はクスクス笑いながら細い指をしっかりと絡め、今度は足を取られないよう慎重に歩く。