雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~



12月に入り、周りの雰囲気はクリスマス一色。

ファッションビル内の装飾も煌びやかで、すれ違う人は明るく楽しそうな顔をしている。

そんな中、自分の気持ちだけがついていかない。


私はエスカレーターのニ段上にいる遼をそっと眺めた。

白に近いライトグレーのトレンチコート。
その下には黒っぽいデニムと綺麗に磨かれた革靴が覗く。


今日は遼に誘われて一緒に服を買いに来ていた。

最後に遼と会ったのは、兄の大学祭でのライブ。

そのときは陽介や、双子の弟の朝陽くんも一緒に行ったので、こうして二人で会うのは久しぶりだ。

響との関係も平行線のままだし、遼の誘いを断る理由も今は見当たらない。


朝陽くんとは高校以来だから本当に久々で。

優しい性格はあの頃のまま、変わっていなかった。

大人っぽくなって少しドキッとしたけど、昔みたいな憧れの気持ちはもう薄れていることに気づいた。



「次はどこに行く?」

遼が振り返って聞いた。


「私はもうたくさん買ったし、買物はいいよ。遼は?」

「俺もいいかな。……じゃあ、帰ろうか」

「……うん」


地下鉄の駅が近づいてくるにつれて、帰りたくない気分が増していく。